「解錠師」を読了。期待してた以上にとっても良い話だった。少年時代に起きたとある事件がトラウマになり口がきけなくなった主人公が、ちょっとしたきっかけで解錠に才能を見いだし、その才能を利用したい人間達の思惑に巻き込まれる形で犯罪に手を貸すことになり…というあらすじ。実は犯罪サスペンスものって、小説でも漫画でも映画でもそれほど相性が良いほうじゃなくて、この本も一部で話題になってた*1ので手を出してみたものの、そこまで面白いことを期待してなかったので、途中からの盛り上がり方に夢中になってる自分にびっくりしたくらい。
やっぱりヒロインが登場してからの、主人公とヒロインとの交流の描き方が素晴らしいと思う。絵を通じた文通とかね。そこに至るまでも、やたらとリアルで臨場感のある解錠シーンの描写に、この本はただ者じゃない…と思わせる迫力があったんだけども、ヒロインと向き合う主人公と、悪人達と向き合う主人公と、まったく異なる温度感がこれまた見事にはまって、たいそうバランスが取れた作品になっていると思う。
あと読んでいて思ったのは、非常に映画向きなストーリーだなぁ…と。映画化決定という話題を目にした記憶がないのが不思議なくらいなんだけど、実際の所はどうなんでしょう。ストーリーは映画向きとは言え、主人公が口をきけないというハンデが、本では苦にはならないけど映像化の際はどうするのか、演出一つで単調にも退屈にもなりそうな分、まだ満足のいく脚色が出来ていないというところか。
既にKindle書籍になっているし、翻訳もとても読みやすいし、個人的には自信をもってお薦めできる一冊。是非とも手に取ってみて欲しいなぁ…。
- 作者: スティーヴ・ハミルトン,越前敏弥
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2012/08/01
- メディア: Kindle版
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