「機龍警察」シリーズ既刊分を一気に読んだ。これがね、めっぽう面白くて。警察組織に導入された二足歩行メカ*1がテロと闘う、近未来警察小説。というと、かの傑作漫画「パトレイバー」を連想しちゃうわけだが、パトレイバーよりももっとダークで硬派な世界観になっている。のっけから人(とは言っても俗に言うモブキャラだけど)がどんどん死んじゃうし、主要キャラたちのくせ者っぷりはパトレイバーと180度方向性が違うし、敵役として登場するテロリストたちは世界的指名手配犯ばかりだし…、なのに物語の舞台は東京で、そんなところでどんぱち始まっちゃったりするし。
と、こんな紹介の仕方をしてしまうと、アクション要素の高い現実味の薄い近未来SF小説という印象を持たれてしまいかねないんだけど、決してそんなこともないのがこの小説のすごいところ。犯罪の描き方、過去話(アイルランドやロシアでの出来事)のディテールだったり、警察組織の腐敗とか現場の葛藤とか、いろんな要素がごった煮になっている中で、それが滑稽無糖に空回りするんじゃなくて、リアルとの折り合いを巧みに付けて物語りが進行してくので、こんな近未来だっていずれあり得るのでは…という説得力にいつのまにか圧倒されていて。そして、ドラグーン搭乗者達の壮絶な過去話と相まって、気がつけばこの機龍警察という物語にどっぷりとつかってしまっているわけですね。
あと、読んでて思ったのは、アニメの長編映画に向いてそうな素材だなぁと。当然監督は押井守でお願いしますw
読んだあとで知ったところによると、シリーズ2作目の「自爆条項」は日本SF大賞に選ばれたようだけど、それも納得の面白さ。依然として見えない「敵」の存在とか、他のドラグーンパイロット二人ほど過去が明らかにされていない姿のエピソードとか、次巻に対する期待は募るばかりです。早く続きが読みたいけど、いつ頃になるかなぁ…。
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*1:物語の軸となる最新鋭「ドラグーン」はマスター/スレーブ機構なので、二足歩行メカというより大きなパワードスーツっぽいけど