7月になって、海外TVドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」のDVD/Blu-rayが日本でも発売されましたね!先週末からスターチャンネルで第2シーズンの放送も始まったし、年内に原作第5部の日本語訳も発売されるしで、ここで盛り上がらなければいつ盛り上がるの?というタイミングですね!
ゲーム・オブ・スローンズ 第一章:七王国戦記 ブルーレイ コンプリート・ボックス [Blu-ray]
- 出版社/メーカー: ワーナー・ホーム・ビデオ
- 発売日: 2013/07/17
- メディア: Blu-ray
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…なのに日本ではまったく盛り上がってるように感じないのはどういうことでしょう。やはり日本では本格的なファンタジーが受け入れられる土壌が育っていないということなのだろうか。原作もドラマもこんなに面白いのに。
あまりにも残念でならないので、改めてこのシリーズの魅力や面白さをね、自分なりにまとめてみたいと思った次第なのです。参考になるかは怪しいが…。
あらすじ
まぁ、これはここで改めて紹介するようなことでもないし、紹介しようとするとそれだけで長文になるので、気になる人は早川書房の公式サイトをチェックするといいでしょう。ちなみに、wikipediaでもあらすじが書かれているけど、あれはあらすじと騙ったネタバレなので、まだ本書を読んでいない人は読まないほうが良いです。*1wikipediaを参照するとよいでしょう。
背景・特徴
とは言え、この物語の背景や特徴に触れないことには、続く文章を書きにくいので、ざっくりと。
- ジャンルはファンタジーです。それも、中世ヨーロッパを連想させる戦記物に近いファンタジーで、魔法やモンスター、神様といったいかにもファンタジーな要素は少なめです。
- 作者であるGRRMによると、全7部構成で、そのうち第5部まで刊行されてます。私はまだ5部を読んでいないので物語がどう進展するのか知らないんだけど、あと2部で本当に完結するんだろうか…。
- 特徴としてよく挙げられますが、とにかく登場キャラが多いです。地名も次々でてきて、読み始めたばかりの頃は固有名詞の多さに辟易しがちですが、一度その壁を越えるととたんに面白くなってきます。逆に、それを乗り越えられない人は、面白くなる前にくじけるでしょう。もったいないんだけどね…。
- 次々と交代していくPOV(視点キャラ)。章が変わるとPOVが変わる構成になってます。当然主役級のキャラがPOVを担当するので、気がつけば感情移入していきますが、読み手によって好き嫌いの差がはっきりでるようで、それもまた面白いです。
- 四季が不定期に変わるという世界で、物語開始時は長い夏が終わりをつげ、間もなく冬に入ろうとしています。これがどのように物語に影響していくかは…。
- ウェスタロス大陸には昔から七王国(
バランシオン家*3タリー家、スターク家、ラニスター家、アリン家、タイレル家、マーテル家、グレイジョイ家)と呼ばれる王国が栄えていたが、300年ほど前にドラゴンを従えて入国してきたターガリエン家によって統一されたという時代背景があります。
- 物語は、15年前におきたターガリエン家に対する反乱戦争を経て新王となったロバートが、「王の手」と呼ばれる宰相のような立場の人を失ったことで、昔からの盟友であるエタード(ネッド)を訪れるところから動き出します。ネッドとその妻、さらに6人いる子供のうち4人がPOVであることからわかるとおり、少なくとも第1部はネッドが物語の核となって進行します。
うーむ、とりあえずこんなところかなぁ。簡単にまとめるのが難しいな…。
上記を踏まえた上で、この物語の魅力となるポイントをもうちょっと掘り下げてみる。
権謀術数渦巻く人間ドラマ
まずは多くの人が特徴として挙げるだろう、人間ドラマの深さ。一癖も二癖もあるようなキャラが次々と登場しては、各キャラが他人を陥れるために好き勝手に策略を練りはじめるので、物語がどう転じるのがさっぱり読めないです。その挙句、ついさっきまで活躍してた人がいきなり窮地に陥ったり、物語から退場することも珍しくないし。わかりやすい家同士の対立関係(スターク家とラニスター家)もあれば、親子間の対立(ティリオンとタイウィンとか)、兄弟間の対立(ティリオンとサーセイとか)、逆に意外な所で生まれる友好関係(ティリオンとジョンとか)とか、なんでもござれです。というか、ティリオン大活躍だなw
で、多岐にわたる権謀術数合戦も、第3部まで読むと、玉座をめぐるチェスの指し手はあの人とあの人の二人だったということが見えてくる。決して風呂敷を広げまくるだけじゃなくて、あの複雑怪奇な人間関係をしっかりとまとめ上げるのがこの物語の真骨頂かもしれない。
ファンタジーらしくないファンタジー
上述したように、魔法やモンスター、神様といったいかにもファンタジーな要素は少なめです。とは言っても、異形人やドラゴンの存在、ル・ラーへの信仰とか、夏が7年続く世界だったり、死んでも生き返るドンダリオンとか、物語のキーの一つ(かもしれない)ダイアウルフとスターク家の6人兄弟の縁だったり、要所要所でファンタジー要素が取り入れられてます。第1部のラスト、ドラゴンが孵化する場面なんかは鳥肌が経つくらい名場面だよね。というか、初読時はいまいちピンとこない第1部のプロローグからして強烈なファンタジー描写だったりするわけだが…。
あっと、個人的にファンタジーらしさを強く感じないのは、単に想像力が貧困だからという可能性ありですねw TVドラマ版をみると、壁とかレッドキープとかアリンの谷とか圧倒的な映像描写を目の当たりにすることになるので、ちょっと印象かわるかもしれない。
魅力的な登場キャラ(特にPOV)たち
長編小説になると登場キャラが多くなるのはよくあることだろうけど、この物語の場合はその比じゃありませぬ。おい、三国志かよ!と言いたくなるくらい、わんさかとキャラが出てきます。三国志の場合は史実がベースにあるのに対して、氷と炎の歌はGRRM一人の頭から生み出されたわけで、そう考えるとちょっと尋常じゃないなぁといつも思います。しかも、単にキャラが多いだけでなく、端役も含めてキャラの活かし方が見事の一言で。特に主要キャラはみんな性格が立っていて、各自の立ち位置や信念に従って行動を起こしていくので、共感できるキャラもいれば、早く死ねばいいのに…と思ってしまうキャラもでてきて、気がつけば物語への没頭感が半端ない。
あと、視点が変わることでキャラの評価がかわったりするのも面白い。例えばジェイミーの存在が顕著かも。スターク家視点だと、猪突猛進で自分の欲望のみが生きがいのような描かれ方をして、単純キャラの代表格だったりするのに、第3部でPOVになると実は過去を含めていろいろ抱え込んでいるのがわかったりする。姉との秘密、弟への愛情、周りから受ける畏怖、父親からの期待、ホワイトガードとしての立ち位置、そして失うことになる戦士の証。POVとして初めて接したときは、こんな飛び道具ありかよ、なんて思ったものですが、読み進めるにしたがってその存在感が増していくという。
第1部から最前線で活躍するティリオンにいたっては、醜い容姿や尖すぎる舌鋒のせいで周りから常に誤解をうける役回りだけども、実はシリーズを通しての良心なんだよな。逆に一見善良そうなリトルフィンガーのように、実は何を考えているかわかりにくいキャラだったり、ネッドのようにま正直すぎて時代に見捨てられることになるキャラとか…とにかくバリエーションが多彩。
キャラの魅力だけでどこまでも語れそうな…。ちなみに私はティリオン、ジョン、そしてアリアがお気に入りです。
伏線の数々
世界設定や人間ドラマや登場キャラの魅力だけでなく、張り巡らされている伏線もすごいです。これは再読時に発見することが多いですね。全編を通して1度読むだけでボリュームが膨大なんだけど、再読することで改めて唸る描写も多いので、ぜひとも2周目を堪能することをおすすめします。2chなんかでは定説になっているジョンの出自なんかも、私は1度読んだだけじゃ気づかなかったしなぁ…。伏線に関しては多くがネタバレにつながるので多くは触れないけども、ぜひ自身の目で確かめてほしい。
先の読めない劇的な展開
そしてこれ。だってさ、POVが行方不明になるどころか、POVでも容赦なく首をはねられたりするわけですよ?ゾンビになっちゃったりするんですよ?八面六臂の活躍をしてたキャラが肉親の手回しで九死に一生を得るような目にあったりするわけですよ?同盟相手が裏切るなんてことは戦記物としてはよくあることだろうけど、めでたい席で血みどろの惨劇が起こったりするしさ…。
この、一見過剰すぎるような劇的な演出も、実はそこに至る過程はしっかりと計算されつくしていて、物語の進行が破綻していないんです、これが。これだけの長編になってなお、お見事すぎるストーリーテリング。ファンタジーだからということで敬遠するにはもったいなすぎる世界がそこには待っている!
というわけで、個人的に激しくおすすめのファンタジー小説、それがこの「氷と炎の歌」。残念ながら合わない人もいるだろうけど、私はこの小説を読まずしてどのファンタジー小説を読むと言うんだ!と声を大にして言いたい。長編小説を読むのはちょっと…という人は、ひとまずTVドラマ版をみてみるのも良いかもしれない。そういう意味で、手を出してみるにはホットなタイミングなんです!
騙されたと思って、まずは1冊 or 1話に手を出してみてほしいな。きっと後悔しないから。そして一人でもGRRM信者が増えると嬉しいのである。
- 作者: ジョージ・R・R・マーティン,岡部宏之
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2012/08/01
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ちなみに、自分が初めて手をだした時の感想を読み返してみるとなかなか感慨深いものがあったりする。読みはじめの頃はいまいち反応も薄いし感想も短めなのに、巻を追うごとにどっぷりつかっていく様が見て取れるもんなw