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ハイ・フィデリティ再読

久々に「ハイ・フィデリティ」を読んだ。

ハイ・フィデリティ (新潮文庫)

ハイ・フィデリティ (新潮文庫)

読書メーターで2010年に読書履歴が残っていたので、どうやら6年ぶりの再読らしい。このブログでは2007年に一度言及している。

shaw.hatenablog.com

これまでに5回以上は繰り返し読んでいる。普段わたしは、どれだけ面白い本に出会っても滅多に再読をしないので、どれだけこの小説を気に入ってるかわかってもらえるのではないだろうか。

未読の方にざっくりとあらすじを説明すると。冴えないレコード屋を経営している主人公(30代男性)が、同棲していた彼女に愛想をつかされるところからはじまる。これまで、女性と付き合うといつも振られる側になる主人公は、いったいなぜ失恋することになるのか原因を探るうちに、過去別れてきた女性に会いにゆき直接理由を尋ねてみることを思いつき…。

このプロットだけきいたところで、何がそんなに面白いのか伝わらないと思う。さらに言うと、物語が進むに連れ明らかになる主人公のダメさ加減にも、あまり共感できる要素はない。ないのだけど…、ではなぜにここまでこの話に惹かれるのか。それはね、繰り返し登場するリストの数々とそれをめぐるやりとりの面白さ!ここでいうリストとは、はてブなんかでもよく話題になる、○○な音楽(映画でも本でも可)10選!的なリストのことですね。例えば、「月曜の朝に聴きたい曲」だとか「A面の1曲目*1」とかがお題で、そこで主人公たちがトップファイブリストを作っては、お互いああだこうだと言い合うような場面が頻出する。

このリスト作成をめぐるやり取りは、単に著者ニック・ホーンビィの趣味の発露というわけではなく、ストーリーに密接に絡んでいくのが「ハイ・フィデリティ」という小説の醍醐味なんだよね*2。物語中盤に出てくる「彼らには哲学があり、ぼくにはリストがある。」という主人公の考えがこの物語の核心を捉えているし、そこにおもいっきり共感してしまう人はこの小説がたまらなく愛おしいものになるはずだ。

このあたりの面白おかしさについては、原作小説を元にした映画版のレビューとして、以下のサイトでわかりやすくまとめられているので、ちょっとでも気になった人はぜひ一読してみることをオススメする。会員登録してログインしないと最後まで読めないけど。

cakes.mu

この、自分が好きなものを対象にしたリスト作成の醍醐味…。これ、好きな人にはたまらないんですよね。かくいうわたしも、つい先日のアカデミー賞授賞式の実況中継をみながら、ディカプリオが主演男優賞を獲ったのは妥当なんだろうけど、個人的にはマット・デイモンのほうが俳優として好きなんだよなー。出演作のうち特に好きな作品ベスト5というお題だったらどんな作品選ぼうかなー、なんてことを思いながらニヤニヤしていたくらいだし。過去、出題されたお題に対してベスト10リストを個人個人が自由に作成して、それを集計してランキングを楽しむ「100ラン」というWEBサービスを作成しようとしてたこともある*3

リストを作成するということは、単なる自己満足で終わることが多いし、それを他人に押し付けたところで共感を得られることなんて滅多にない。だけど、リストを作って楽しむことに理由なんて必要無いんだということが確認できるだけでも、この小説を読み返す価値はあるんだと、いつも読み終わるたびに思うのである。

以下、お気に入りのセリフや文章。読み返すたびに、思わずはっ!?となっちゃう。

バリーの会話は、名前の羅列でしかない。いい映画を見ても、プロットを説明するわけでもなければ、どんな気持ちになったかを述べるわけでもない。(略)彼は、トップ・テンとかトップ・ファイブとかいう基準でしかものを考えない。だからそのうち、ディックと僕もそうなってしまった

「あなたはただ…ただ、なんにもやらないのよ。頭のなかで考えてばかりで、ちっとも動こうとしない。だから何も変わってかない。おまけに、考えてるのはくだらないことばっかり。だから、状況を把握できないままでいるんじゃない?」

まさに醜態だ。だがもうとまらない。あまりに大切な瞬間。ずと待ち続けてきた瞬間。なのに、ぼくが頭のなかであたためつづけてきた、あのトップ・ファイブ・レコード・リストはどこに行ってしまったのだろう?

*1:すでにA面という表現が懐かしいものになっているけど、物語は1990年台初頭が舞台なので、まだまだカセットテープが全盛です。

*2:一番わかりやすい例でいうと、親しい人の父親が死んだ日に「死を歌ったポップソング」を考えるくだりとか。「よおし、みんな、死を歌ったトップ・ファイブ・ポップ・ソングだ」

*3:100ran.netというドメインも取得してたんだけど…サイト完成にいたらずにボツってしまったのが今でも残念だったりする