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自分の趣味について書き散らかす雑記ブログ。

印象に残ってるツール・ド・フランスの名シーン、迷シーン

今年のモンヴァントゥステージで、例のランニングシーンを観ながら、こんな想像の遥か上を行く場面はそうそうお目にかかれないよなー、なんて思ったけど、いやいや何が起こるかわからないのがサイクルロードレースの醍醐味だよなと思い直す。

というのも、2009年のツールからサイクルロードレースを観るようになってから、なんだかんだ年に1度くらいの頻度で強烈に印象に残るシーンを観てきているからだ。すぐに思い出せるものだけでもこれだけある。

カヴェンディッシュはもう映さなくていいです


ツール初参加の新城幸也が、第2ステージのゴール前でいきなり5位入選したあと、リプレイで栗村さんが発した言葉。このステージの興奮が、そのままロードレース観戦の入り口になったと言っても過言ではない、思い出深いシーンである。

レンショーによるヘッドバッド3連発(4:20頃)


前年のツールでステージ6勝をあげ、当面スプリントでカヴェンディッシュとHTCコロンビアトレインに敵う相手はいないと思われている中、ファラーとガーミントレインは諦めていなかった。そして11ステージのフラムルージュを越えたところでそれは起きた。ファラーのために決死のトレインを組んでいたジュリアン・ディーンがやや斜行気味にHTCコロンビアトレインに対抗しようとしたところで、カヴェンディッシュの発射台役のレンショーが渾身のヘッドバッド3連発!いや、あの局面では時速70キロ以上に達しているはずなんですがね…落車の心配とかないもんなんだろうか?ちなみにレンショーは一発退場処分になったとさ。

フレチャフーガーランドが車にはねられる(1:00頃)


平坦ステージで逃げグループも出来上がり、このまま終盤まではなにも起こらないステージ、のはずだった。しかし、そんな平和なステージでもトラブルが起きるのは一瞬だ。レース関係車がその逃げグループを追い越そうと強引な割り込みをしたところ…なんとフレチャをはねてしまった!横に跳ね飛ばされたフレチャから玉突きのように発生する落車、そして一番反対側を走っていたフーガーランドは押し出されるように道路から追いやられ、そのまま有刺鉄線まで吹き飛ばされてしまった。いや、もう目を疑うとはこのことだよ…。

スプリンターのフースホフトが超級山岳ステージで勝利

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最近「登れるスプリンター」が増えた。多分自分がロードレースを観るようになる前にも登れるスプリンターと呼ばれる選手はいたのかもしれない。でも、一選手の代名詞的にこの呼び名が使われるようになったのはフースホフトが超級山岳オービスクを越えるステージで勝利をおさめたのが契機だったんじゃないだろうか。このステージが山頂ゴールではなかったこと、一緒に逃げた面子にクライマーがいなかったことなど、当然恵まれた面も大きかったとはいえ、だからといって普通のスプリンターが勝てるコースではなかったはずだ*1

サガンのゴール時ポーズ集


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2010年、ロードレース界に衝撃のデビューを果たした、怪童サガンリクイガスは2年間かけて徐々にレースに慣れさせていき、そして満を持して初参加となった2012年のツール。そこで、初参加とは思えない強心臓ぶりを発揮、いきなりスプリントで勝利を果たす!それも、謎のポーズを決めながら*2w そして、そのままポイント賞ジャージを獲得することに。さらにその後もポイント賞争いでサガンに勝てる選手はおらず、今年のツールも含めて5年連続でポイント賞ジャージを獲得し続けることに…。

マディオ監督とティボー・ピノ(1:30頃)


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ツール初参加にして、全参加選手の中でも最若年だったティボー・ピノに、いきなりステージ勝利のチャンスが訪れた!しかし、メイン集団も後ろから迫ってくる!必死に逃げ粘るピノと、後ろからひたすら激励し続けるマディオ監督。この時のマディオ監督のテンションの高さがとにかく印象強くて。いいよね、こういう師弟関係ってさ。

オリカバス事件


ツールにとって記念すべき第100回大会。スタートにはコルシカ島が選ばれた。日本からも、Jスポーツの実況解説陣が現地入りし、現地から実況を行うという気合の入りぶり。そんな中、第1ステージでいきなり事件は起きた。レースも終盤、ここからスプリンターチームが隊列を組み始めようかという頃になって、急に慌ただしくなる実況。「ドン!という爆発音のようなものが聴こえました!」え?そして入ってくる続報「どうやらオリカ・グリーンエッジのチームバスがゴールアーチにぶつかり立ち往生しているとのこと!」ええ!?そこから始まる大混乱は、動画を観てもらえればよく分かるだろう。ほんと、どうなることかとハラハラしながら、でも声を出して笑っちゃったもんなw

リッチー・ポートのアシスト魂(3:30~4:30頃)


前年、ウィギンス擁するチーム・スカイは、イギリス人選手初のツール総合優勝という偉業を達成する。もちろんエースだったウィギンスも強かったのだが、山岳アシストとしてウィギンス以上の強さを見せていたフルームも、レースを見た人々に強烈な印象を残した。そして翌年。前哨戦まで結果を残し続けたフルームはエースとしてツールに参戦することに。前評判通りの強さでレースを展開するフルームと、アシスト達による鉄壁の山岳トレイン。誰もがこのままフルームの優勝で決まるだろう…と思っていた18ステージ、最後の山岳でことは起こった。ゴールまであとわずかというところで、いきなり手を上げてチームカーを呼ぼうとするフルーム。なんと痛恨のハンガーノック*3!しかしすでにチームカーから補給食を受け取ることはルール上許されない。どうなるの…?あれ、そういえばさっきまでずっとフルームを牽いていたポートもいない!?と思いきや、突如画面にあらわれるポート。そしてフルームに補給食を手渡した。窮地のエースにかわって、ペナルティ覚悟で補給食をとりにチームカーまで戻り、そしてその使命を果たしたのだった*4
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マルティン大逃げ勝利(1:20頃)


現役最強のルーラーの一人、トニ・マルティン個人TTでめっぽう強いだけじゃなく、一人で3人分とも評される平地でのアシスト(鬼牽きっぷり)に魅せられるファンも多い*5。さてそのマルティン、前年のブエルタ第6ステージでゼロキロアタックを決め、そこから独走で逃げ続け、残り50メートルまで逃げ粘るという、あとわずかというところで偉業を達成しそこなっている。そしてこのステージ。デマルキと二人で逃げ続けた後、残り60キロ地点から独走を開始。今度はそのまま逃げ切りを達成してみせた!
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フラムルージュ崩落に巻き込まれるアダム・イェーツ


ここからは今年のツールの出来事なので、記憶にもあたらしいところ。フラムルージュ崩落は、もうこれ以上ないというタイミングでアダム・イェーツが巻き込まれることに。これだけ派手に落車し、怪我も心配されたイェーツは、その後新人賞ジャージを他人に譲ることなく、さらにあとちょっとで個人総合の表彰台までも手が届きそうな…というリザルトを残す、大躍進のツールになったとさ。

フルームのランニング


そして締めはやはりこれ。昔、シャカリキという漫画で、登坂の途中でパンクに見舞われた主人公が、サポートカーが追いつくまで自転車を担いで坂を登り始めた、というシーンがあったけど、似たようなことがツールの勝負どころで、しかもマイヨジョーヌを着た選手が行うことになるとは、きっと作者の曽田先生だってびっくりだよ!

ツールだけでもすぐに思い出せるネタがこれだけあるし、過去のレースレポートを振り返ればもっと沢山あるだろう。先日の日記で、グランツールにマンネリ化を感じるなんて書いたばかりだけど、それでもついつい観戦しちゃうのは、他のスポーツでは考えられないようなシーンを目にしたときの、なんとも言いようのない興奮だとか感動だとかを味わいたいからなんだろうな。

*1:まぁ、今だったらサガンがこのコースで勝利しても驚きはしないけど。いわばフースホフトの上位互換って感じだもんな、サガンって。

*2:レース後、本人曰くそれぞれフォレスト・ガンプとハルクの真似だと判明

*3:だったとわかったのはこの後なんだけど

*4:結局ポートだけじゃなくフルームもペナルティを受けたみたいだけど。

*5:かくいう自分もそんな一人なわけだけどw