Shaw's Home Page(本館)

自分の趣味について書き散らかす雑記ブログ。

シークレット・レース

実は読み終わってからすでに1ヶ月くらい経つんだけども。この本を読んだことで、自転車競技に対する熱が冷めたりするかな…?と自分で様子をうかがってたんだけど、今年のツールを大いに楽しめたので、思ったほどマイナス効果はなかったらしい。でも、一人だけ別次元のレベルで走りきったフルームに対しては、ちょっと不安になるわけだが…。

さて、本を読んだ感想はというと。読んだ直後に、Twitterでこんなつぶやきを残した。言いたいことはだいたい書いてたりする。

常に結果を求められるプロの世界で、パフォーマンスを向上するために行き着くドーピングの世界。それが特に顕著になってしまったのがサイクルロードレースだったわけだけど、「シークレット・レース」の語り部だったタイラー・ハミルトンも、なぜドーピングの世界に浸かることになったのか、あまりにも赤裸々に語られた内容は、正直想像を上回る酷さだった。

でも、その酷さに打ちのめされるだけじゃなくて、タイラー・ハミルトンがどういう経緯でその告発に至ったか、そしてそれがサイクルロードレース界にどのような影響を与えたのか、終盤のカタルシスも大きい内容だった。今年になってついにランス・アームストロングがドーピングを認めたのは、この告発による影響も大きかったと思う。

今もまだ完全にクリーンになったわけではないのは、未だドーピング検査にひっかかる選手が後を絶たないことからみてとれるんだけど、それでもクリーンになりつつあることを信じたいのはファン心理というものなのだろうか…。

語り手が元プロのサイクリストであり、ドーピング問題に深く切り込んだ内容もあいまって、すでにこの本を手に取った人のほとんどは、サイクルロードレースファンじゃないかなぁと思うし、ファンであるほどこの本のことを絶賛する気もする。だけど、サイクルロードレースに興味がない人が読んでも興味深い内容だと思う。

ドーピングにまつわる話を読んでる間は気持ちも沈みがちになりつつも、それでも本をめくる手がとまらない面白さは、語り手であるタイラー・ハミルトンの実直さもあるんだろうけど、著者による綿密な取材、そして本書をまとめあげた構成力、さらに読みやすい翻訳をしてくれた訳者の力量、もろもろが揃っていたからなんでしょう。スポーツドキュメンタリーとして、非常に高いレベルでまとまってると思います。

というわけで、かなりのお薦め本です。自転車に興味ないから…という理由でスルーするのはもったいないですよ。

シークレット・レース―ツール・ド・フランスの知られざる内幕 (小学館文庫)

シークレット・レース―ツール・ド・フランスの知られざる内幕 (小学館文庫)