ブラッド・ソングが面白い
最近、海外の翻訳小説といえばSFを読む機会が多めなんだけども、久々に手を出してみたファンタジー小説に当たりがあった。それが「ブラッド・ソング」。Kindle版で読んでいるので帯が手元にないのだけども、どうやら氷と炎の歌を引き合いに出した謳い文句になっているらしい。
物語の導入はこんな感じ。
帝国の捕虜となり、どこかの島で行われる決闘に連れて行かれようとしている主人公。そして主人公に同行している、なにやら少なからぬ因縁のありそうな国誌編纂者。どうやら国誌編纂者は主人公のことを快く思っていないようだが、事情があり主人公のことをそれなりに調べているらしい。島に渡る船に乗っている間、主人公は国誌編纂者に話しかける。「知り合いだったのかい?<望まれし者>のことだよ」。<望まれし者>とは、国誌編纂者の親友であり、帝国の希望であり、そして主人公に殺された人物であった。そのことを主人公に伝えつつ、過去の主人公の悪行をつらつら話していると、主人公はその内容の誤りを指摘する。自分の知っている話とは異なることに興味をもった国誌編纂者は、船旅の間に話を聴いてみることにした。そして主人公は、自分の幼少の頃からの出来事を語りだす…。
妙に続きが気になる出だしで、惹きこまれるように1巻目を読んだのが3ヶ月前。そして、昨日続きがKindleで発売されたのでこちらも一気に読了。いやー、やっぱり面白いわ。
氷と炎の歌を引き合いに出すにはスケールがだいぶ違う(そこまで複雑な話でもないし、登場人物もそんなに多くはない)んだけども、戦記物の王道ファンタジーという意味では、名前を挙げたくなる気持ちもわからなくはないかな?
物語は、主人公の一人称視点によって描かれる、幼少期に騎士になるための訓練を始めるところからの成長記録。主人公の出自だったり王国の闇だったりにまつわる血なまぐさい話だったり、過酷な訓練の中で芽生える、同期たちとの友情なんかがやや淡々と語られていく。章の変わる区切りで、導入部同様、主人公と国誌編纂者の対話が挟まることで、世界観の補足がされる感じ。
1巻目ではほとんど女っ気のない話だったけど、2巻になってヒロインかも?というヒーラーさんと頭の切れすぎる王女様が登場して、いよいよ楽しみが増えてきたかな?世界観やストーリー自体にそこまでの目新しさはないかもしれないけど、それでも読んでいて面白いと感じるのは、それだけ語り口がしっかりしているってことなんじゃないだろうか。
どうやら3部構成のお話で、そのうちの最初の1部(全3冊?)のうち2冊まで邦訳本が出ていて、次はまた3ヶ月後のお楽しみ。こういう続き物は、できれば同時発売か、それが難しいのであればせめて1ヶ月毎の連続刊行してほしいなぁ…と思います。
あと不安なのは、ここまできて1部が途中で打ち切られることはないと思うけど、その続きである2部以降が翻訳されるかどうかという点。読書メーターでこの本の感想書いてる人少ないんだよなぁ…、きっと読んでいる人が少ない=売上が少ないってことだと思うので、1部までで翻訳で打ち切られる悪寒ががが。ハヤカワさん、結構シビアだしなぁ。若干似たタイプの海外のファンタジー小説である「エルフの血脈」、あれだけ面白かったのに、最初の1冊だけで打ち切られるとは思ってもいなかったしな…。
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