サブプライムローンの破綻から始まった金融危機の話で、名著「マネー・ボール」を書いたマイケル・ルイスの小説「世紀の空売り」の映画化。俳優陣が随分と豪華、という点でも気になる作品でアメリカの賞レースでも何度もノミネートされていたので、鑑賞するのがとても楽しみだった1作。で、結論から言うと、期待通りの面白さだった。
『マネー・ショート 華麗なる大逆転』 アカデミー賞ノミネート予告(90秒)
去年読んだラノベ「ワールド・エンド・エコノミカ」で得た知識が、この話の理解にかなり役だった気がする。予備知識がまったくなかったらもっと置いてけぼりを食らっていたかもしれない。
以下、雑感を箇条書きで。
- 一応サブプライムローンがどういうものかは知っていた。
- 当然この話が、空売りにかけて巨額の儲けを出した人たちの話ということも知っていた。
- 主演扱いの4人(クリスチャン・ベール、スティーブ・カレル、ライアン・ゴズリング、ブラッド・ピット)が全面に押し出された宣伝だったので、てっきりこの4人が演じるキャラがどこかで一堂に会することになり、そこから腐りきった金融界の裏をかき…みたいな話を想像していたけど、全然違った。3つのパートが直接交わることなく*1平行して話が展開する、ちょっとした群像劇という趣。
- 実質上の主役はスティーブ・カレルが演じてた正義感あふれるおっさん。俺が不正を正さねば!というメッセージ性が一番伝わりやすかった。
- しかしこのスティーブ・カレルという役者、過去フォックスキャッチャー、リトル・ミス・サンシャイン、ラブ・アゲインで見かけてるのだけど、毎回印象が全然違うんだよな…こんな正義感あふれるおっさん役がはまる人だっけ?
- テーマがテーマなのでシリアスに偏ってもおかしくない作品ではあるのだけど、金融用語の解説などでみせたコミカルな演出がエンタメ作品としてのバランスを良い塩梅でとっていた。隣に座っていた二人組が外国人で、日本人がクスリともしない場面で反応していたのにつられた面もあるのだけど、ちょいちょい笑っちゃったよw
- 3つのパートそれぞれで空売りで一儲けしつつも、空売りの性質上、そして金融危機になったという事実もあってたんなるハッピーエンドという映画ではないわけで、それを考えると「華麗なる大逆転」という副題はちょっとどうなんろうとは思った。
- ところどころ、なぜこの場面でこの表情なんだろう?いまいちわからん…という箇所があって、それは自分の物語への理解度不足が原因だったのだけど、鑑賞後以下のサイトを読んでいろいろ腑に落ちた。それを踏まえてもう一度鑑賞してみるとより面白くなるかもしれないなぁと思った。
- 鑑賞後に原作「世紀の空売り」を読み始めた。ただ、原作と映画とで登場人物の名前が異なるのはとても紛らわしいと思います。
「世紀の空売り」を読み始めて、なかなかマネー・ショートの登場人物でてこねーなぁと思っていたら、1/10くらいまで読み進めたところで実は原作と映画でほとんどの人物名が変わってることに気づいた。なんて紛らわしい…!
— shaw (@hashimukai) 2016, 3月 9
誰が観ても面白い!という映画ではないかもしれなけど…、社会派な作品やドキュメンタリが好きだったり、金融に興味がある人なら楽しめるんじゃないかなぁ。
ついでに。上記で名前を出した「ワールド・エンド・エコノミカ」、ラノベと侮ることなかれ。ものすんごく面白いし、第3部の元ネタがもろサブプライムローンの話題なので、この映画が面白かった人はぜひ一読してみることをおすすめします。文庫本だと分厚すぎて読みづらいという弊害があったけど、今はKindleでも読めるようなので、手を出しやすいはずだしね。
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*1:映画の演出でニアミスするシーンはある